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連載 Ledlenser PEOPLE #007 白川ゆうと さん(RUNGRY代表)「トレイルランニングに新風を吹き込む男」

トレイルに魅せられた表現者による、新しい感謝の形
2020年OSJ KOUMI100の覇者、2024年信越五岳100マイル総合5位のトレイルランナー、白川ゆうと。
2020年に群馬・高崎で低酸素ジム「RUNGRY」を立ち上げた彼の人生は、行動力と笑顔が織りなす物語だ。
断たれた夢、新たな地平
幼少期から足に自信があった白川。大学は箱根駅伝の名門校へ進み、ライバルと切磋琢磨しながらレースへの情熱を燃やしていた。しかし、怪我という予期せぬ壁に突き当たり、その夢は一瞬にして砕け散った。白川は言う、自分はエリートランナーでもなんでもないと。地元・群馬の新聞社に就職後、山との、トレイルランニングとの出会いが彼のランナー人生を根本から変えることに。
今回の撮影で白川が指定したのは、彼の地元であり活動拠点でもある高崎。待ち合わせ場所に集合すると、さっそく今回の取材を自身のストーリーズで告知すべく収録。この身軽さこそがインフルエンサーとしても活躍する所以。
エバンジェリストの使命
すっかりトレイルランニングに魅せられた白川は、レースの厳しい現実を知る。コロナ禍を経て、トレランレースが各地で開催されるようになると、その広がりの陰で、かつての人気だったレースも参加者が減り、ボランティアも以前ほどが集まらないことが気になっていた。
上位陣が華麗に駆け抜け、表彰式が執り行われる一方、時間制限ぎりぎりでゴールを目指す一般の選手たちは、ようやくたどり着いたエイドステーションで供されるはずの行動食は尽き、水さえも切れかけている。ゴールでは撤収がはじまっており、声援もない中で一人フィニッシュする。
レースである以上順位はつくが、そもそもレースは自分との戦い。トップでゴールする選手も、最後にゴールする選手も同じフィニッシャーであり、称えるべきヒーロー。なのに何かが足りない。
自分にできることは何だろう…。白川は決意した。「最後尾からスタートして、走る選手たちを励まし、勇気づけよう!」と。
レースとは本来、楽しいものだ。そこで白川は新しい形の応援ランナーとして、苦しんでいる選手やビギナーと共に走り、徹底して励まし、勇気づけるのが自分の務めではないかと考えるようになった。
目標はトレラン界の三津家貴也!
「トレラン界の三津家貴也さんになる!」。覚悟を決めた彼の宣言は大胆不敵だ。
海賊王にオレはなる!そう言い切るルフィのように。
もちろんこれは冗談でも、ギャグでも、なんでもない。本気も本気。
「白川がいるなら、そのレースに出たい。白川が走るからレースやイベントに人が集まる」。そうなることを真剣に目指している。
実際、白川は持ち前の行動力でレース主催者を説得し、応援型の招待選手としてその役割を担うレースがいくつか決定しているし、すでに多く仲間やメーカが彼の情熱に共感している。正々堂々と支援を求め、自らの夢を追求する姿勢がとても魅力的だ。
日常に息づく励まし
その原点は故郷であり、今も彼が暮らす群馬・高崎にある。いつものように高崎の市街地や近くの山を走る白川。彼の周りでは、出会う人々から温かい声援が絶えない。笑顔で応え、その温かさを還元する。これまで自分が受けてきた応援や恩義を、トレイルランナーに返していく。それこそが彼の使命なのだ。
勝利への覚悟
選手としての顔はまったく違う。勝ちに行くレースに臨むとき、白川は全身全霊を込める。「正直、これで死んでもいいと思うくらいの気持ちで挑みます」と語る。見て惚れ惚れする太ももやカーフを見れば、彼がどうなりたいのか、選手として高みを目指す姿勢は容易に見て取れる。
シューズはHOKA、ソックスはOLENO、ニーダッシュはNew-HALE。そしてウォッチはCOROS。どれも白川が信頼を寄せるお気に入りのギア。
「トレランは楽しいことが8割、残り2割は自分がどうなりたいかだと思うんです」。それが選手として、そして伝道者(エバンジェリスト)として捧げるトレイルランニングに対する気持ちにほかならない。
「理想を言えば挫折なんて、ない方がいいし、怪我は絶対しない方がいい、負け知らずで勝ち続けた方が良いに決まってます」。
そう言って笑う白川の目は、とてもやさしい。挫折を味わい、それでも挑戦し、どんな時も楽しさを忘れない男の目だ。
若い時は自分のためにがんばる。その姿に自分を重ね、まわりは応援する。選手は有形無形、様々な支援を受け続ける。そのような経験を重ねていくと、その支援に感謝すればするほど、いつしか人は恩返しがしたくなる。
選手として支援や施しを受けたように、今度は自分以外の誰かを応援したくなる。実際、自分のためなんかよりも、世のため、人のための方が、人は何倍もがんばれるのだ。
多くの人に支えられてきた表現者。その恩返しは、はじまったばかりだ。
高崎と言えば観音様。その足元にある「観音茶屋」の女将さんと。観音最中で知られる老舗和菓子屋さんが営む銘店。ここに立ち寄ると、いつもこの笑顔で歓待を受ける。
自身が主催する低酸素ジム「RUNGRY」にて。効率的に心肺能力を高められる低酸素ルームでのトレーニングは、時間がない社会人にこそおすすめ。初心者も大歓迎とのこと。この日は標高2,292m相当の酸素濃度だった。
RUNGRY =Stay hungry and run 白川の活動に目が離せない。
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