

連載 Ledlenser PEOPLE 特別編 井手大介さん(DJ)富山湾 ホタルイカすくい紀行
(Photos & words by Koki Nojima: Ledlenser Japan)
富山湾 ホタルイカすくい紀行
春風そよぐ新月の夜。FMヨコハマの人気番組「The Burn(ザバーン)」の看板DJ、井手大介さんを隊長に、おなじみの辰巳ディレクター、新人の森屋ディレクターらが集った富山湾の冒険は、まさに「旅にこそ意義がある」を体現する物語となった。
時は来た、北陸への誘い
雄大な立山連峰がその懐に抱く富山湾。春の柔らかな日差しが海面をキラキラと照らす午後、我らが探検隊は期待に胸を膨らませていた。そう、賽は投げられたのだ。
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最初の目的地は地元で愛される「きときと寿し」。「きときと」とは富山弁で「新鮮」の意。はるばる富山までに来たからには、ここは絶対に外せない。日本一うまい回転ずしと評される名店の品々に隊員たちは目を輝かせた。舌鼓を打ちながら、夜に待ち受ける神秘の生き物への期待はいやがおうにも膨らむのだった。
ローカルの空気に触れて
食後に立ち寄ったのは地元の釣具店。普通なら奥にあるはずの季節商品が、ここでは堂々と「ホタルイカコーナー」として店の一等地に鎮座している。地元の人々にとって、ホタルイカ漁がいかに特別なものかを実感させる光景だ。
ゴールドラッシュならぬホタルイカ ラッシュで混雑する店内。ウェーダー、網、ライフジャケット、果ては沖漬けのもとやジップロックまですべてが揃う。まるで武器を選ぶ戦士のように真剣な表情の井手隊長。毎年参戦していて、ギアのアップデートに抜かりはない。ホタルイカはもちろん、それを捕食するフィッシュイーターに狙いを定めた疑似餌もかなり充実ぶり。現地ならではの仕様が数多くみられた。
黄昏時のキャンプ場にて
美しい砂浜が目の前に広がる松林のキャンプ場には大小さまざまなテントが。ウェーダーと網がそこここで干されており、多くの利用者がホタルイカ狙いとわかる。しかも前日はまずまずの収穫があったというではないか!
我が隊がベースキャンプを設営する頃には、西の空が茜色に染まっていた。手慣れた様子でテントを立て、焚き火を囲んで、地元で調達した食材で男のBBQ。出陣前の腹ごしらえとは、まさにこのこと。食後はテントで仮眠を取り、深夜の出陣に備えた。勝負は日付が変わってから。
タープ内でご機嫌な光を放ってくれた井手隊長のエリアライト「AF8R work」
「今夜こそは、あの神秘的な光を一目見てみたいですね」
井手隊長が〆に作ってくれた絶品焼きそばをほおばりながら、隊長の言葉に全員が頷く。謎に包まれたホタルイカの幻想的な青い光を、身振り手振りで説明する。話が盛り上がるほどに期待は高まり、時間の経過も忘れるほどだった。今夜のフィーバーを祈って。
いざ、真夜中の日本海へ
日付が変わる頃、寝袋から這い出した一行。ウェ―ダーとライフジャケットで身を固め、レッドレンザーの最新ヘッドランプを頭に装着する。井手隊長の武器、H19R Signatureが夜の闇を切り裂く。最大4,000ルーメン、パワーモードでも1,800ルーメンという抜群の光量は、周囲と比較してもケタ違いの明るさだ。追従式の「いけす」もハンドメイドで、いざ出陣。
「これなら、ホタルイカも逃さないぞ!」
意気揚々と砂浜へ向かう姿は、まるで現代の宝探し隊のよう。足元を照らす光が砂の上で踊り、波の音が心地よく響く夜。この瞬間だけでも旅の価値があると感じさせる静かな盛り上がりがあった。
静かな海辺の交響曲
腰まで海に浸かり、ヘッドランプの光を頼りに網を構える。周囲には同じく夢を追う100名近い人々。男性ばかりかと思いきや、ご夫婦で参戦しているとおもわしき方もチラホラ。ピークタイムともなれば、広い海岸線に並ぶ無数のヘッドライトの灯り、圧巻の光景に。皆が黙々と、海面を漂うはずの小さな生命体を探して海岸線を彷徨い歩く。
「あの明るいヘッドランプは、どこのメーカーのものですか?」
近くにいた地元民らしき男性が声をかけてくる。井手隊長のH19R Signatureの圧倒的な明るさに視線が集まる中、他のメンバーが装着していたNEO9Rも意外な活躍を見せていた。
もともとトレイルランニング向けに開発されたNEO9Rは、パワーモードで600ルーメンと控えめながら、ホタルイカすくいにも必要十分な明るさを発揮したからだ。ヘッド調整の自由度が大きく、真下を照らせる使いやすさと、スポーツ用に設計された長時間装着しても肩が凝らない快適さが好評。NEO9Rですら「明るいヘッドランプですね」と周囲から声がかかるほど。
レッドレンザーの力強い光で盛り上がる間も、海は静かに波を打ち続ける。しかし主役のホタルイカは一向に姿を見せない。新月、風もなく穏やかな夜、これ以上ないコンディションなのに…夜が更けると共に、人の数が減り始める。
夜明け前の奇跡
アフターザ ミッドナイト。かなり遠くのエリアまで歩みを進めていたいた森屋ディレクターが、Uターンをして戻り始めた時についに事件が、 「あっ!」 そこには小さなホタルイカがひとつ。薄暗い中でもわかる、かすかな青い光。
「プライスレス=奇跡の一杯」と呼ばれることになるそのホタルイカに、全員が歓声を上げた。その小さな生命との出会いは、何十匹ものホタルイカに出会うよりも特別な思い出となった。「いる、探せばいるぞ!」がぜん捜索に熱が入り、夜明けまでそれは続いた。
旅の終わりに
明け方まで続いた精一杯の捜索にも関わらず、我々の部隊はホタルイカに遭遇することはなかった。タイムアップ。しかし誰も失望した様子はない。ベースキャンプへ戻る道すがら、東の空が少しずつ明るくなり始める中、井手隊長が言った。
「ホタルイカをすくえなかったのは残念だけど、この旅自体は大成功だったね。また来よう。」そう、科学が進んだ今日でも、こればかりは誰も予想ができない。シンプルにいるか、いないか。努力や気合いではどうしようもないのだ。
毎年2月から5月にかけ、特に新月などの暗い夜に人知れず接岸するというホタルイカ。その神秘的な生態は未だ人間の理解を超えている。予測できないからこそ、出会えた時の喜びはひとしお。
帰りの車中、すでに次の遠征計画を語り合う隊員たち。レッドレンザーのフラッグシップH19R SignatureとNEO9Rの力強いパフォーマンスに満足しながらも、それを最大限に活かせるホタルイカとの出会いを次回に期待する。小さな「奇跡の一杯」を携え、富山の朝日を背に、一行の冒険は幕を閉じた—いや、次なる冒険への序章を迎えたのかもしれない。