
記事: The Professionals 職人に訊け #002 センサーに魂を吹き込む職人、角田 悟さん

The Professionals 職人に訊け #002 センサーに魂を吹き込む職人、角田 悟さん
The Professionals 職人に訊け #002
センサーに魂を吹き込む職人、角田 悟さん ——電気計装士/角田電工代表
Photos & words by Koki Nojima: Ledlenser Japan
Special thanks 撮影協力: サイト―機械金属株式会社
初回から大好評の当コラム、今回は群馬県高崎市を中心に、フリーの電気計装士として活躍する角田 悟さんにお話を伺いました。8年の修行を経て今年春に独立を果たしたばかり。まさにヤングライオンという言葉がぴったりの職人。レッドレンザーを通じて見えてくる、道具へのこだわりについて語っていただきました。
仲間の推薦から始まった出会い
レッドレンザー) ご愛用いただきありがとうございます。さっそくですが、レッドレンザーとの出会いについて教えてください。そもそもレッドレンザーの製品についてご存知でしたか?
角田さん) 現場で知り合った仕事仲間が使っていて、「これ、すごくいいよ」と勧められたのがきっかけです。試しに彼のヘッドランプを使わせてもらったんです。正直に言いますと、それまではヘッドランプは点けばいいと思っていて、特にこだわりはありませんでした。
レッドレンザー) 第一印象はいかがでしたか?
角田さん) 驚きましたね。明るさや光の質感はもちろんですが、樹脂製パーツひとつとっても質感がとても高い。一言でヘッドランプと言っても、使われている素材のグレードが違う、つくりがまったく違う。「こんなヘッドランプがあるんだ」って思って、すぐに購入しました。以来、仕事には欠かせない道具のひとつです。
レッドレンザー) ありがとうございます。ということは、角田さんが普段利用されるプロショップでは展開がなかったのですね。
角田さん) そうなんです。私たちが出入りしているのは職人だけが入れる専門店で、一般の方は入れないようなプロショップです。そこで売られているヘッドランプでも、ここまでのものはありませんでした。
でも最近は、こだわりの高品質な道具を手掛けている、知る人ぞ知るブランドやメーカーがあることを知るようになってきました。有名でなくても優れた道具があるなら、ぜひ使ってみたいと思っています。例えば電動工具ひとつとっても、ホームセンターで売られているような手ごろなものだけでなく、驚くほど高価で、精度が較べられないくらい高い製品があるんです。そういうこだわりの一級品を扱うプロショップもあって、私も必要に応じて利用しています。
見えない場所での精密作業
レッドレンザー) 電気計装士のお仕事について、詳しく教えてください。
角田さん) 電気計装士は、工場や商業施設の電気設備、特にセンサーや制御機器の設置・保守を行う専門職です。温度や圧力、流量などを測定するセンサーを適切な場所に設置し、それらを制御盤に配線して、施設全体が自動で動くように調整するのが主な仕事です。
センサーって、当たり前すぎて、その道の人間でなければその存在を認識しないほどですが、私たちの暮らしには本当に多くのセンサーがあって、それによって設備が稼働しているんです。そしてそれは、設置して正しく機能するようメンテナンスをしている職人がいるからこそなんです。
一般の電気工事とは違って、非常に細かい配線作業が多く、しかも配管の奥や天井裏、機械の陰など、光の届かない場所での作業がほとんどです。センサーひとつ取り付けるにしても、設置場所の選定から配線ルートの検討まで、すべて正確に見えていないと質の高い仕事はできません。
レッドレンザー) そんな現場でレッドレンザーはどのように役立っていますか?
角田さん) 電気計装の仕事では、両手を使っての精密作業が基本です。細い配線を扱ったり、小さなネジを締めたりと、手持ちライトでは作業になりません。高所作業も多くヘッドランプは必須ですが、レッドレンザーに変えてからは作業効率が格段に上がりました。
特に感心するのは光の均一性です。安価なヘッドランプだと中央は明るいけれど周辺が暗くなったり、ムラがあったりします。でもレッドレンザーは照射範囲全体が均一に明るく、細かい作業をしていても見やすいし目が疲れにくい。長時間の作業でも集中力を維持できるのは、職人として本当にありがたいです。
独立への道のりと道具への思い
レッドレンザー) この春に独立されたとのことですが、どのような経緯だったのでしょうか?
角田さん) 最初は営業職をしていましたが、地元の電気工事会社に入って、一から仕事を教えていただきました。はじめての現場仕事で、最初のうちは夏の暑さがこれほどまで厳しくて、冬の寒さがこれほどまで辛いのかと身に沁みました。でも様々な経験を積んでいくうちに仕事を覚え、徐々に自信も付き、独立を考えるようになりました。
最初の数年は一般的な電気工事でしたが、途中から工場や商業施設の計装工事に携わるようになって、この分野の奥深さに魅力を感じたんです。現場仕事なので3Kなんて言われますし、職人も高齢化が進んでいますが、若手が元気かというと実はそうではありません。むしろすぐに辞めてしまう方が多いのも事実です。でも、だからこそ私はチャンスだと思ってます。やる気さえあれば、学べる環境があるし若手は重宝がられる。どんどん仕事をこなして経験を積めますし、いい仕事を続けていれば、さらに良い仕事が回ってきますからね。
独立を決めたのは、自分の技術と判断で、より質の高い仕事を提供したいと思ったから。お客様のニーズに合わせて柔軟に対応できるフリーランスの強みを活かしたいと考えました。まだ駆け出しですが、おかげさまで順調にお仕事をいただいています。
レッドレンザー) 独立にあたって、道具選びで重視されたことはありますか?
角田さん) 独立したら、すべての道具が自己責任になります。会社員時代は会社が用意してくれた道具を使っていましたが、今は自分で選んで、自分で管理しなければなりません。だからこそ、本当に信頼できる道具を選びたいと思っています。
8年の修行期間を経験して思うのは、道具にこだわる職人は多くて3割、もっと少ないかもしれません。一部には道具にものすごくこだわる職人もいて、なかには腰道具に何十万円とお金をかける人も珍しくありません。毎日使う商売道具ですからね。皆こだわりがあるんです。
まだ独立したばかりですが、どちらかというと私も後者ですね。良い道具があると、仕事がはかどるし、精度も上がります。パナソニックの電動工具、そしてレッドレンザーが自慢の道具です。仕事の相棒として、毎日確実に働いてくれる信頼性は何より大切。価格だけで選ぶのではなく、長期的に見てコストパフォーマンスの良い道具に投資するようになりました。
プロが求める進化への期待
レッドレンザー) 現在はどの機種をお使いですか?
角田さん) メインで使っているのは「H7R Core」です。明るさ、バッテリー持続時間、耐久性のバランスが良くて気に入っています。最近では、より自然に見えるCRI90の「H7R Work」も気になっています。多い時は1日に100か所以上のセンサーを取り付け、凝視して作業をするので、見やすい、疲れにくいことは本当に大切なんです。
電気計装の現場ならではの要望もあります。例えば、光の色温度の調整機能があるともっと嬉しいですね。配線の色を正確に判別したい時は昼白色、長時間の作業で目を疲れさせたくない時は暖色系というように使い分けられると理想的です。
また、防塵性能もさらに向上してもらえると助かります。工場の現場では粉塵が多い環境もあるので、レンズ部分に汚れがつきにくい構造や、清掃しやすい設計になっていると良いですね。
レッドレンザー) 貴重なご意見をありがとうございます。電気計装という専門分野ならではの視点ですね。
角田さん) 電気計装の世界では、センサーに「魂を吹き込む」という表現をよく使います。ただ機械的に取り付けるのではなく、その場所や用途に最適な状態に調整して、初めてセンサーが本来の性能を発揮する=生命を持つという意味です。
良い道具があってこそ、良い仕事ができる。レッドレンザーには、私たち職人の「魂を吹き込む」作業を支える道具。さらなる進化を期待しています。きっと同じ思いを持つ職人は多いはずです。もっと良いモデルがあるのなら、どんどんテストしたいですね。これからもよろしくお願いします!
編集後記デフレを物ともせず、いい仕事をして、仕事が仕事を呼び、道具に投資ができる。角田さんのような若手の職人が元気で勢いがあるのは、日本社会にとっても素晴らしいことではないだろうか。次回も現場で輝く職人たちの声をお届けします。